そんなに長い眠りじゃなくてもいい/ホロウ・シカエルボク
名も知らぬ男、だけどそれはなぜか気心の知れた男のように思えて…
おれはヘッドホンをはずし、連続し続ける瞬間である生きた世界に耳をすませる、あの場所と同じように暗闇を駆け抜けてゆくエンジン…それから静寂
動かなくなったそのときが
いちばん生きてるみたいに見えた
なにもかもなくなって
垂れ流しはじめてからが
終わるときにきっと始まるものがある、ベランダの向こうがわに向いてこと切れた、あの男はきっと、朝がはじまるときを見たかったのだ、おのれの浄化を誰かに任せたかったのだ、神のみもとに身を投げだすすべなき連中のように…だけど汚れた亡骸では、天国じゃ引き取っちゃもらえないだろう
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)