中編小説 文芸誌ジョイントオーナーシップ・スペース 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
 
っても、朝日が昇らなかった。まだ太陽が昇る時間でなかったのかもしれないし、もうすでに昇る時間を過ぎたのかもしれなかったが、僕や、どす黒い暗闇に沈んだ君にはどう考えてみても分からないだろうと思った。そして少なくとも僕は、この場所から動くことは出来なかった。

 急に寡黙になった君は、煙草の箱を一箱空けるまで無言だった。ただひたすら、僕から新たに渡された携帯灰皿を満杯にするまで灰を落とし、煙草を吸えるところまでぎりぎり吸った。僕は煙草の煙を上空に向けて吹いたり、文芸誌に向けて吹いたり(もう文芸誌なんて眼中になかったのかもしれない)する君をずっと眺めているうちに、一つだけ点いた照明の効果もあって、ま
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