中編小説 文芸誌ジョイントオーナーシップ・スペース 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
 
良な人間ではない。…元々善良な人間じゃなかったのかもしれないけど、?悪人?であり、?罪人?なんだ」
 僕はその話を聞いて失意のどん底にいたが、やっとのことで声を腹の底から搾り出した。
「…どうして君は自分の父親を殺したりなんかしたのさ?…」
 しかし君は再び俯いたまま、何も喋らなかった。僕はまだ君が起こした現実を信じきることができなかった。僕は君を目の前にして軽いパニックに陥っていた。
「…どうして…どうして…」
 君の全身からは僕の心を凍り付かせようとするような沈黙が発散されていて、それはこの空間の空気をも重くし、肌に張り付いて離れなかった。僕はあまりにも現実離れした恐怖を感じ、鳥肌が
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