中編小説 文芸誌ジョイントオーナーシップ・スペース 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
ある文芸誌の最後のページまで目を通し、少々荒っぽく置くと、再び溜め息をつき、ゆっくりと瞼を上げて僕の顔を見た。
「拘置所じゃ文芸誌なんて読めないよ。誰も差し入れになんか来てくれないしね。…僕は僕に関わるあらゆる人間を裏切ってしまった。妻や子供や親戚、バンドのメンバーやレコード会社の人々、…そして大勢のファンをね。…そして君の事も…。僕はミュージシャンとして失格の前に、人間として失格の烙印を自ら押してしまった。僕の未来はもう深い暗闇の中だよ。全てを失い、いや、全てを手放したのかな。…でも君は僕に会いに来てくれた。純粋に嬉しいよ…。?父親殺し?の罪を犯した僕を?君?は怖くないのかい? 殺人鬼なんだぜ
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