中編小説 文芸誌ジョイントオーナーシップ・スペース 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
 
軽くなった携帯電話を落とし、?心の中のどこかでは、涙腺を緩ませ、安堵している自分を見つけた?。それはやはり僕が君に嫉妬していたからかも知れない。その自分の内面が、解放感に満たされていることで、疲れた眼球を癒していた。景色は、?僕の身勝手な苦悩?までも、頭に正常に血が巡ってくるまで、無にしていた。しかし、どこの局も次のニュースに移ると、僕の体中に、途轍もない焦燥感が駆け抜けた。僕は何度も夕刊の一面と社会面の記事を繰り返し読んだ。?君?の顔写真や、東京の自宅マンションに青いブルーシートが掛けられ、捜査員の誰かの上着を頭に被された状態で搬送車に乗り込む君の姿が写し出されていた。僕の心臓に還ってくる血液が
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