中編小説 文芸誌ジョイントオーナーシップ・スペース 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
 
意すら抱いていた。当時の精神状態だって尋常じゃなかったかもしれない。しかし、殺意を抱くことと実際に殺害するのは違うはずだ。僕には、?僕が尊敬する君?には、その感情を抑制する能力を備えられているはずで、殺害にまで到達するだけのエネルギーに変化する程の要因が化合されたというのだろうか。だからとはいえ、憎しみを作品に昇華させる思考回路がパンクしたとも考えられなかった。真面目で、全てを受け入れ包み込むような寛大な性格。でも、脳裏に映し出される現実は、僕の中の?君?のイメージを抹消させ、「容疑者」という単語が、煙草の吸い過ぎのように肺を、どす黒く疼かせ、心はガンの腫瘍ができたような痛みを覚えた。僕は急に軽く
[次のページ]
戻る   Point(0)