中編小説 文芸誌ジョイントオーナーシップ・スペース 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
 
た理由はなんとなく分かる。クリスマスに彼女にそのペアリングをプレゼントしたんだろう?」
 僕ははっ、として、自分の左手の薬指を見た。そこにはペアリングが嵌められていた。
「今夜会った時にすぐ気付いたよ。君達は結婚願望とかあるのかい?」
 君の左薬指には本物の結婚指輪が嵌められており、一つだけ点いている照明で輝いた。僕はそれに未来を思い浮かべ、
「多分大学院を卒業して働いた後か、…もしもの話だよ? …小説家としてデビューしたら結婚すると思う」
 僕は君に初めて内心を打ち明けた。
「そうか。そうなんだ」
 それ以降、その話について君は何も喋らなかった。その後、僕の気に入った作家の批評をし
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