中編小説 文芸誌ジョイントオーナーシップ・スペース 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
 
気がするんだ。事実バンドは売れているんだけど、僕の個人的な願望として、より多くの人々に愛されるバンドになりたいと思う。それと同時に、自分の?文学的な?能力を伸ばしたいという願望もある。それは二極化していて、結局の話、?二頭追う者は一頭も得ず?、ということになる。いつか僕は自滅していくんじゃないかと不安に苛まれることが最近多いんだ」
 君の苦悩は僕の心を大いに揺り動かした。僕は残り僅かな発泡酒の缶をフロアーに音を立てて置くと、その音は四方八方の暗闇へ吸い寄せられるように走っていった。君からも視線を落とした。秒針に支配されている日常の音はこの広い空間では聞こえなく、僕達を沈黙の淵に叩き落とした。その
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