中編小説 文芸誌ジョイントオーナーシップ・スペース 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
! ってクレームが来たけどね」
君は既に何本も空けていたが、全く顔が赤くならなかった。
「僕はずっと君にとても憧れていた。君のようなミュージシャンになりたいと思うこともあるんだ。あっ、でも僕には作曲の才能も無いし、歌が下手だからダメか…」
僕はつい、今まで心の内に秘めていたことを呟いてしまった。表情には出さずに、思わずハッとした。酔っぱらっているせいかも知れないが、過去に、君に対する劣等感を抱いていたのを思い出し、今、嫉妬心が湧いてこない感情の変化を、自分の中で発見した。もう、昔のように、君が僕より多彩な才能を持っていることなど、どうでもよくなったのだ。ただ僕は君という人間をとても尊敬し
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