中編小説 文芸誌ジョイントオーナーシップ・スペース 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
変わり、君のバンドの知名度が一気に上がった曲を演奏し始めた。
僕達観客は、一瞬にして君の魔法にかけられた。
アンコール三曲を聴き終わり、大歓声の中、君達のバンドがステージ上から下がると、観客はぞろぞろと会場を後にした。僕達二人もそれに続いた。外に出ると、汗塗れの火照った体を初冬の凍り付くような風が急激に冷やした。分厚いコートの首元をきつく閉めた彼女は笑顔を綻ばせ、真っ白い息を吐きながら僕に言った。
「貴方が言っていた通り、いいバンドだったわね」
僕は君に会いたい気持ちで胸が張り裂けそうな思いと共に、絶えず湧き上がってくる高揚感と興奮を、来月また会えるまで引き摺っていか
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