中編小説 文芸誌ジョイントオーナーシップ・スペース 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
 
上げ降り続け、腕から滲み出てきた汗を飛ばし、喉が潰れるんじゃないかと思うほど絶叫していた。大サビに入る前、興奮が頂点に達したのか、一人の若者が、友人であろう肩の上に乗っかって、観客に思いっ切りダイブした。君は思わず笑い、その声がマイクに入って、群衆達で埋め尽くされた会場は彼らの笑い声で満たされた。
 更に演奏が続いた。時間の感覚の麻痺と、自分が自分で無いような錯覚に陥ったが、自分を見失わないように、彼女の手を強く握り締めた。彼女はこんな異次元のような空間でも絶えず冷静だった。僕は彼女が退屈しているのではないかと不安になったが、横顔を見ていると、微かな微笑みが浮かんでいたので、彼女は彼女なりに楽し
[次のページ]
戻る   Point(0)