中編小説 文芸誌ジョイントオーナーシップ・スペース 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
 
曲以上聴いたような気がする。途中、興奮し過ぎたのか、眠たくなってきて、意識が朦朧としていたところを、彼女に、大丈夫? と耳打ちされてはっ、とした。ある過去のアルバムの収録曲の演奏が終わると、ステージ上が明るくなり、一言だけ、君が、自分のバンド名を告げた。沸き上がる歓声。すぐさま、今度は、最新アルバムに収録予定の曲だろう、今まで聴いたことの無い激しいロックチューンを演奏し始めた。初めて聴く曲というものは始め、違和を感じるものだが、この新曲に関しては、そういうものが全く感じられなかった。寧ろ聞き惚れた感じがあって、一番目の曲のリズムをいつの間にか覚えていて、歌詞は分からなかったが、皆、拳を高く突き上げ
[次のページ]
戻る   Point(0)