中編小説 文芸誌ジョイントオーナーシップ・スペース 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
 
イブハウスへ向かった。

 僕達は超満員のライブハウスの最後尾で君のバンドの歌と演奏を黙って観ていた。何度も君に声を掛けたい衝動に駆られたが、その度にその感情を圧し殺した。歓声が物凄い。隣の四十代後半の男性の歓声が非常に耳障りだった。彼女は苦笑いし、男性が汗を僕の顔に飛ばして、君の歌に合わせて歌っている事に不快を感じずにいられなかった。しかし、と僕は思った。君のバンドのファンは、ステージ開始前に様々な人々とすれ違って感じた事なのだが、ロックバンドとしては、実に年齢層が広いな、ということだった。上は白髪混じりの初老の人もいれば、下はどう見ても小学生低学年だろうという子供もいる。アニメのタイアップ
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