中編小説 文芸誌ジョイントオーナーシップ・スペース 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
 
して、まず下書きからスローペースで書き始めていた。僕は君に会うその日の午後に、書店に行って、片っ端から小説を立ち読みしていた。多々ある単行本の中に、僕も君も好きな作家の新作の小説が発売されているのに気付きすぐに手を取って、僕は時間など忘れてそれを夕方まで読み耽っていた。

「なんか一月号ってあると、時間を先取りしている感じがするね」
 僕は文芸誌コーナーの文芸誌を床に並べる作業をしながら呟いた。
「そうだね。なんだか気持ちだけが来年に飛んでいったような気がするよ」
 君は笑いながら言った。今日君が、機嫌が良いのは、明日は君のバンドのニューシングルの発売日だったからであった。
「先行シン
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