中編小説 文芸誌ジョイントオーナーシップ・スペース 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
 
通しては決して見せることのない僕だけが知っている、君の表情や言葉の一つ一つを回想していた。君との時間を他の誰にも知られたくない。が、しかし、一方では叫び出したい衝動もあった。?僕と君とは固い友情で結ばれているんだ?と。通行人もまばらになってきた頃、僕はようやく再び芽生え出した優越感が冷め始めた。突然雪虫が風に乗って僕の顔にへばり付いた。
「もうすぐ十二月だ」
 僕は小さく呟き、昨日の記憶と、彼女と聴いた君の歌を交互に思い出しながら、決して溶けない雪虫の雨が地上に降り注いでいるのを見た。



 【十二月】

 卒論を書く為に大学図書館から、様々な種類の本を借りてそれを参考文献として
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