中編小説 文芸誌ジョイントオーナーシップ・スペース 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
 
くこともある。君のようにそこまで父親を憎悪していない。彼女に「君」の存在を知られたことを知った瞬間、僕は優越感みたいなものが消えていったような気がした。その優越感はある意味、僕自身を支えていた感情であり、僕だけの秘密だったのだ。それを愛する彼女にさえ、知られたくなかった。君は僕だけの?もの?だったのだ。僕は彼女に君のことが好きだということは黙っていた。そんなことを考えているうちに、曲が終わり、今まで興奮していた感情が一気に消え失せ、
?月に一度、文芸誌コーナーで会う?
 という欲求は胸の海底の奥深くへ、沈んでいった。彼女が次の授業の為にキャンパスに向かうと、僕は一人になりたくなった。映像を通し
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