中編小説 文芸誌ジョイントオーナーシップ・スペース 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
 
ないし、気を緩めたら途端に涙が溢れてきそうな位切ないけど、涙はもう流さない」
そう言って君は清々しい表情をした。笑顔の奥に僕の大好きな未来の希望を沢山含んで。僕は差し出された僕より少し小さな手の感触を心に刻むようにゆっくりと強く握りしめた。
「さようなら…。君のことは一生忘れないよ…君も僕のことをずっと覚えていてくれるかい?」
「忘れないよ」
 硝子のドアから太陽の蒼い光が射し込んできて空間を一瞬にして眩く満たした。僕は思わず目を閉じると、体が光に溶けたように意識と心臓の鼓動と君の体温だけが残って、次第に君の体温が消える前にもう一度だけ君の握力を感じた。



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