中編小説 文芸誌ジョイントオーナーシップ・スペース 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
 
に、残り僅かな時間を満喫した。

 朝日が昇る頃になると、僕達はフロアーに並べてあった文芸誌を元の場所に戻し、君がお尻の埃を払う仕草をすると、無意識に真似てしまった。君が声を上げて笑うと、表情を崩さないまま僕と面と向かい、長い沈黙があった後、君は手を差し出した。
「これで本当にお別れだね。僕は君と会えて本当に良かった。最後にお別れする前に君に礼を言わなければならない。…僕が隠し子を庇って留置所に入れられた時、君がいなかったら僕は真実を飲み込んだまま自殺していたかもしれなかった。本当に有り難う。そんな危険な状態の僕をずっと支えてくれていたのは他でもない、君なんだ。もうこの場所で会えることはない
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