中編小説 文芸誌ジョイントオーナーシップ・スペース 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
 
うに何度か軽く叩いた。君の腕は暖かかった。新たに溢れてきた涙で視界が曇り、涙が落ちる音がフロアーで微かに飛翔した。君はもう泣いていなかった。しかし僕の顔を君が覗き込んだ時、瞳は充血したままだった。胸が激しく痛んだ。頭の中では伝えたくても伝えきれないであろう気持ちが錯綜し、心臓を締め付けるような切なさに絡まっている、先程の未来への希望が僕を奮い立たせ、心の入り口を塞いでいる無数の言葉達を突き破った。
「将来、必ず君に会いに行くよ」
「うん、その日を待ってるよ」
 そう言うと僕と君は目尻を下げ、ふざけ合ったり冗談を言い合ったりして、まるで長い時を経て再会したカップルのように、本当の兄弟のように、
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