中編小説 文芸誌ジョイントオーナーシップ・スペース 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
が認められ、世に出て、いつか君の元へ届けられたらいいなという希望で満ち溢れていた。そしていつの日にか現実で、君と会えることを願った。
春はもうすぐ傍まで来ていた。出口の硝子扉からまだ完全に熟していない青い果実のような光が空の闇を覆い隠し、いつもより早く朝が到来しようとしていた。その曖昧な分厚い境界線の中で、僕の頭はまだ君に言いたい言葉で一杯だった。本当に伝えたい言葉というのは、こういう時に限って思い出したり、思い浮かんだりしたりするものだと感じた。僕は言葉が詰まって声が出なくなったので、突然沈黙して一度呼吸を止めて頭を垂れていると、君は僕にすり寄ってきて僕の肩にがっちりと腕を回し、宥めるように
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