中編小説 文芸誌ジョイントオーナーシップ・スペース 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
眼球が光沢を帯びてきた。
「その言葉を僕はずっと待ち望んでいたよ。僕自身自分からは中々言い出せなかったけど、君はとうとう自分の殻を破ったんだね」
「君ともうこの世界で会えないのが寂しいよ」
僕はその言葉に照れながら堰を切ったように涙が溢れてきたのを両手で拭った。
「もう君と…君と会えないんだ」
僕は自分自身に迫りつつある現実を理解させようとして言った。君は目を真っ赤にして僕に育ちつつある小さな未来を見つめるような眼差しをおそらくは僕の瞳孔の奥に向けていた。僕は代わりにやけに小さく見える君の瞳孔を捉えた。それは海に沈む満月のようでいて、そのイメージが微熱を含んだ景色に切り替わる瞬間に、
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