地/一 二
 
その言葉に驚いた
永劫の時の中
今まで男の存在に気がつく
地の者など誰もいなかったのだから
男は空からその娘を眺めて愛した
幼く、無垢で、純潔な娘であった
だがその娘は
無意味で残酷な争いに巻き込まれ
若くして命を落した

男は地を呪い
己が持てる力の限り
有りとあらゆる災いを地上に齎したが
地は滅びなかった
地は剰りに穢れていたが故に
男の呼び寄せる災いは
全て地へ吸い込まれ
地の人々は災いの存在に
気付くことすらなかった
男は絶望のあまり
倦み、疲れ果て、胸を痛ませた

絶望に溢れた地上を
全て滅することが
男の望みだったが
男にはその力が無か
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