地/一 二
 
無かった

だが、在る日
男がかつて愛した幼子に似た少女が
天をじっと見つめ
そして、男をじっと見つめた
「そこにいるんでしょう?神様?」
男は驚愕した
この娘は地から見えぬ筈の俺に
話しかけてくる
男は云った
「地の子よ!私の声が聞こえるのか!?」
彼女は黙って
真摯に、真心から、男を見つめた
空を見る彼女の眸に
空の向うの天が写っていた
天、男の故郷、天の国
男は全てを理解した
男は天へと身を繋いでいた縄を斬り
自らの身を地へと堕した

男が起きると、そこには
「起きられたのですね、御子さま」
優しい笑顔を浮かべた
天を写した眸の娘
可愛らしい小さな女の子が
温かいスープ皿を持って立っていた
男は笑って彼女を抱き寄せた
暖かく優しい薫りがそこら中に広がった

始めに少女があった
少女は神と共にあった
地に光あれ
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