記憶の壷/ホロウ・シカエルボク
 

それ以上綴らないで
恐怖にも似た断片を
陽だまりのぬくもりなんかに似せたような調子で


わたしの心は
わたしの肉の中などにはなく
反動に任せて水を飲む木彫りの鳥みたいに
身体は運動を繰り返して
果てる
心をそこに残していてはいけない
翡翠の中の蜂みたいに凝固してしまうから


夢に出てきた懐かしい人たち
昔過ぎて愛してると言えない
このあたりの風は海から吹いてくるので
わたしの感情は古いものから順番に錆びていってしまう
冬になるのに
暖かそうな真似なんか出来ないし


秋を引き留めようとするみたいに
赤蜻蛉の羽を追いかけていた幼い日
ゆうやけこや
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