記憶の壷/ホロウ・シカエルボク
こやけがわたしに教えてくれたこと
歳を取るごとに少しずつ
寒さは形を変えるのだと
わたしは蜻蛉を捕まえるのが下手だった
何度も網を破いては
うつむいて帰った土塊の道
夜が遅いからもう寝なくてはいけません
時が過ぎるから馴れなくてはなりません
寝たり起きたり繰り返して
いつかわたしも失われる記憶の一部になる
新しい枕とシーツを
まだ終わらないものがあることを
その清らかさでわたしに囁いてください
優しさなどは散りばめないでください
そこに夢を見られるほどに
なにも知らないわけではないのです
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