檸檬少年と優しい涙/千月 話子
切ない
涙を流しても
傘を突き破る酸性雨の周りでは
愛する人さえ見守るだけで・・・
檸檬の木の下
色あせる葉陰に
檸檬少年
黄色い実は取り入れられて
降り続いた雨も
今は 夏の国へ行ってしまった
高台の住処に風が吹けば
遠い街の汚れた空気を一掃してくれると
喜ぶ 人々
茶葉工場の工場長が
サングラスとマスク越しに
暖かい握手をすれば
少し離れた 優しい色の屋根の下で
仄かな酸味薫る 喫茶店を開く
いつでも新鮮な檸檬少年
これでもう寂しくない これでもう怖くない
「あなたと僕が微笑む間に
どんなに距離があったとしても
夏の視
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