燃えないごみの日/salco
ない
頭蓋に貯え込んだ理も知も記も、見方によっては
営々と五感の反射に準じる蟻の愚直よりむしろ非力で
個の存在意義は希薄だと言えるのだろう
「それでも」
かつてこの惑星の大気を呼吸したことが「あった」
慰藉に満ちた青空を見たことが「あった」
一度は旅する雲と会話したことが「あった」
雨の滴に打たれ
日の光に浴して目をしばたいたことが「あった」
時に虹の祝福さえ享けながら
そして愛する者の胸に耳をつけて心音を聴く幸福を暫時、知って「いた」
傍らの人が、無言の裡に名を呼ぶのを聞いたことが「あった」
この僥倖は、いかなる不幸や絶望によっても挫滅しない、
また生命自身に内包され
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