薄幸と的/木屋 亞万
 
涙は目から出てこない
そんな薄っぺらな喪失感に
霧のような雨が降る、夜
わたしはどうすればよいのだろう
等間隔に街灯は立っていても
道がゆがんでいたらその均等さに意味はない

どの座布団よりも薄いこの幸せは
自転車で帰る暗い夜道にある街灯みたいなものだ
真っ暗ではない
たいして明るくもない
ぬくもりもやさしさもない
白い明かり

なぜ寒くなったら死んでしまう種になれなかったのだ
冬を眠ったまま越えてしまうこともできない

寒気の格好の的になる薄幸を
防虫剤の染み付いたコートの中にしまう
寒い中を生きていかなければならない
殺すつもりなら苦しまないようにやって
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