確かな過去なら昨日すれ違った誰かに聞きなよ/ホロウ・シカエルボク
込んでゆくのだ
どこかの骨が摩耗して小さな音を立てて欠けた
俺にはそのことが判った、たまたま耳を―澄ましていたから
なにかの拍子に首輪がすっぽ抜けた
標準的戸建の申し訳程度の庭に蹲る犬みたいに
遠くの嵐が蒸し暑い風を連れてくる、そんな夜の汗には、いつも
話したくない記憶ばかりがあわれ蚊のようにつきまとって…
日常に傷んだ腕を振れ
疎ましいなら自分だけで追い払わなくてはならない
摩耗したあとの瞬きの間に瞬間的な悪夢を見た
夢魔は新しい回線にアクセスしているようだ
目眩がいつかのように同じ波を辿りながら外耳にやってくるわけは
忘れてはならないことがあるという暗示なのかもしれない
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