そして冬/瀬崎 虎彦
 
るんだけれど。
 コウイチを独り占めしたいとは、もはや思わない。素敵な男だと思っていたのはわずかの間だった。だから、あたしたちはこれからどんどん距離を感じて、いつしか別れるのだということを実感したのは、はじめて体をあわせたときだった。そして今別れるときが訪れた。それは前もって決められていたこと、少なくとも、あたしの中でははじめからそうであることだったので、感傷は、悲しみはそれほど多くない。
 もう、二度と会えませんか。
 コウイチは未練たらしい。今、初めて分かった。もう会えないから、お別れなのに。コウイチの部屋にあるものたちを改めて眺める。観葉植物はコウイチよりもあたしにとって近しい存在であ
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