異子。亜子。/手乗川文鳥
 
ました」
「あなたは、つまらなさそうに、虫を海に戻しました」
「そして手を取って、帰ろうかと言うのです」
「あなた、それはわたしではありません」
虫。
手を引かれていくのはわたしになった虫、
波打ち際でよろめいて光っているのがわたし(消えそう)
それからは、いかなる場面においてもわたしはいて、けれどそれはわたしではないので、
空白に。行間に。睡眠に。暗闇に。重力に。
わたしは溢れながらこぼれ落ちて這い上がってきりがない、
地面が崩れて裂け目からたくさんのわたしが顔をだしてすぐにわたしで満たそうとする、
埋めたい!埋めたい!
ありとあらゆる隙間と空洞を
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