異子。亜子。/手乗川文鳥
 
毛、四つ足の椅子を抱く、潮騒は遠のいて、
吐く息が中空で破裂する
まぶたのないわたしが群れになって泳ぐ
泡のない朝と昼と夜と、円環の水槽、
白波の向こうで(椅子の声)あなたがわたしを呼ぶ、
わたしはななしだから応えることが
できない/ない。


穴ぼこから出て穴ぼこを埋めて自分の穴ぼこに触れるみちすじ
夏の終わり、あなたはわたしを夜の海へ連れ出して
誰にも言わないで、と言いながら、わたしを砂浜に沈めた、
海面では緑色に光る小さな虫が浮いていて、あなたはわたしではなく虫をすくい上げて、
わたしはそのまま損なわれてしまった、
「虫は、光らなくなりまし
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