真夏の菓実/佐倉 潮
 
よ。でもあたしたちこんな風に色鮮やかに着飾ってて、なんで、なくなっちゃうんだろうって思うと、おかしな気分になるから」
「いつかなくなるからこそ着飾るのさ」
「そう…かもしれないけどさ」
「今を生きる」
「それ知ってる。映画でしょ」
「サァ」
「ねえ、寂しくなった時どうしてる?」
「バスに乗るよ」
「バス?」
「ああ、市内じゃ乗り放題で500円。一日グルグル回っていりゃ、寂しいことも忘れてそのうち眠くなる」
「バスは苦手。なんだか怖いの。どっかへ連れてかれそうで」
「じゃあ観覧車にでも乗ればいいんじゃないか」キットカットは背中をぼりぼり掻いて言った。
「とにかく何かに乗るべし
[次のページ]
戻る   Point(1)