創造妊娠/佐藤真夏
 

空っぽになった耳の穴には心臓の音がこてんと横たわり、ひとりで息ができないとお陀仏ですよ、というようなことを言っていたけれど、水面を探してもどれがそれだかわからなくて、そもそも水に面なんてあったかしらと頭の中を泳ぎまわっても水の顔を思い出せる気はしなかった。
そのうちに意識は体ごと下へ下へと引き寄せられて、息は苦しくなるばかりで、顔ってなんだっけ顔なんていらないよねとお経を唱えるように手を合わせてぶつぶつ言っている間にわたしは眠ってしまった。
    *
おへその辺りからすっと一筋、ひかる中空の管がのびていた。
お母さんを探しましょうね。
耳の穴で声がひそひそと鳴る。いいえ結構です、
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