きりん草/佐倉 潮
て」
「ふううん」
「あら、信じてないのね」
「ううん」どっちつかずの返事で答える。僕の頭を、
君がぽんぽんと叩いた。「どっちにしろ」攻撃のあい
ま僕は言った。「僕の小学校の先生は教えてくれなか
った」
「そうかしら」
「そうだよ」
「きっと、あなたがそれを望まなかっただけよ」
「そうかしら?」
各駅列車が次の駅に止まると思いのほか乗客があっ
た。君はひざを立てることすら止めて、前を向いて座
ってしまい、それきり僕らは、きりん草の話もしなく
なった。
+
月曜の朝、寒いからコートを羽織って外へ出る。空
には薄い曇。あやつり人形のように
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