きりん草/佐倉 潮
、僕は視線を床から持ち上げて、首
を回し、こめかみを窓枠に寄せた。川なんて見えず、
代わりに原っぱのそこかしこには黄色い花の群。
「たくさん咲いてるね。あれは菜の花かな?」
僕は君に尋ねた。
「菜の花じゃないわ。あれは、きりん草」
君が僕に答えた。
「きりん草?」と僕。
「そうよ、おかしい人。秋に菜の花だなんて!」そう
言って、大げさに君は笑った。
「秋に菜の花は咲いてないわ」
「そうか」
そういえば、そうかもしれない。
「きりん草は葉っぱと根っこに毒があるのよ」
「ほんとうかい?」
「ほんとうよ。小学校の時に先生に習ったもの。きり
ん草を触っちゃだめだって」
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