骨音 他二篇/豊島ケイトウ
 




 「梅の地紋入りカワウソ」

 ほとんど水切りのみで
 一日ほどけますから
 川は適宜です、快調です

 黎明から夕暮れにかけて
 南極を除く世界全域の水辺で
 カワウソが犬死にだとか
 水かきと
 小臼歯とを反論させ、
 温かにほほえむ窓明かりを
 見上げたままだったとか

 詮無いものですものの有終は

 これではあんまりですから
 いっそ川のほとりで
 啓蟄に向けてふるえますか

 ただ、わたしのことです
 春を待たぬまま
 やがてゼンマイ仕掛けに
 収斂するでしょう、かすかな
 はるかな南風の基軸によって

 そうしたら儲
[次のページ]
戻る   Point(16)