●●●●の回帰/リンネ
 
、あれは見覚えのない子だ。
 だが、その子の着ていた黄色いTシャツが妙に気になる。しばらく心なしに見つめていると、次第にTシャツの輪郭がぼぉっと崩れていく。やがて蛍の光のようにぼんやりと千切れ、夕暮れの薄暗い空気へ染み込んで消えてしまった。……どうも、少し眩暈がする。
 ともかく、ここが私の知る場所であるなら、左から二番目の棟の三階が私の家なはずだった。
 
 『●●●●』
 いや、確かに私の家である。なんとなく表札の名前が他人のもののようにも感じるが、●●●●は私の名前のはずだ。ほっとして家に入ろうとドアを回すが、鍵が閉まっていた。(カギハドコダッケナ) 両手でジーンズのポケットをまさ
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