陰湿機/「Y」
 
というような、鼻にかかった微妙な声を出した。それで私は何となく安心した。その「ふふん」の中に、怒りが混じっているようには聞こえなかったからだ。
 妻は「棄てなくてもいいんじゃないの」言った。「あれって、変な機械だよね。箱を開ける気にはなりっこないし、触るのも嫌だけど、妙に存在感があるんだよ」
「……存在感?」
「うん。あなたの部屋に掃除機をかけているときとか、そう思うの。私もあれは棄てないほうがいいと思うんだ。なんとなくだけど」
 私は妻の言葉を意外なものに感じ、彼女に訊ねた。「使う見込みもないのに、どうして棄てないほうがいいと思うんだよ」
「そうだねー」と彼女が言った。「なんか、バカみ
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