白い白い土蔵のなかで/吉岡ペペロ
 
ばらく夢を見ていた

眠ってしまったのだろうか

夢のなかでは伊藤くんの妹さんが話していた

おにいちゃんはね、お父さんのお弟子さんと口論になったの、

ほんとうに妹さんと話していたのかも知れない

それでお父さんに怒られて、あのなかで反省しているの、

伊藤くんにまちがったことなどない、と叫んでいた

叫んでいたのは子守唄を叫んでいた

4月のまだ早い夜が青くしめっていた

もうだれの読経も聞こえてこない

白い土蔵がめのまえにあった

伊藤くんの妹さんはいつのまにか消えていた

あたりを見回していた

僕は土蔵よりも白い月を見つけて


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