白い白い土蔵のなかで/
吉岡ペペロ
伊藤くん、月が白いよ、土蔵よりも白いよ、
そう言って土蔵に駆け出していた
板窓のすきまからなかをのぞいてみた
片ひざを立ててあぐらをかいている伊藤くんがいた
土蔵の天窓からは月のひかりが差し込んでいた
双眸にうかんだ青い月影
柔和に引きつれた微笑にそれが凄絶をあたえている
土蔵の板窓が震えているのは僕のふるえでも風で起こったものでもなかった
伊藤くんがなにかべつの存在に入れ代わっていた
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