白い白い土蔵のなかで/吉岡ペペロ
なかった
諏訪の森のまえでわかれて伊藤くんも僕も家に帰った
母さんのおはぎを食べながら母さんの質問に僕はてきとうに答えていた
僕はうまれつき太りやすいたちでそれだけが原因ではなかったけれど級友によくいじめられた
伊藤くんだけが僕に堂々とやさしかった
いや、伊藤くんはだれにでも優しかったのだ
伊藤くんはクラスでも、いや学校中でも一目置かれた存在だった
ぼくはお父さんのような宗教家になる、
そんな口ぐせの小学生などほかにいるわけがなかった
みんな伊藤くんならなれると思っていた
何人ものカバンを持たされて歩くのが遅いと小突かれているのを伊藤くん
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