カナリヤ/ホロウ・シカエルボク
ときにはそれは重油のようなものだったり
あるいは泥のようなものだったりした
(ああこれはやがて海になり、俺はそれにより激しく窒息するのだ、そんな景色は何度もあった、そんな景色はこれまでに何度も眺めてきた)
と
俺は思った
色や感触を変え
何度もやってくる感覚なのだ
俺は走った
足元の
脳漿を
高く跳ねあげながら
その飛沫が身体のあちこちに
嫌なしみを作ったけれど
もうそんなことは
構ってはいられなかった
俺は想像したのだ
脳漿の海に溺れ
身体中のあらゆる隙間に
脳漿を詰め込んで窒息する自分のことを
そんなことはごめんだった
そんなことには
絶対に関わりたく
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)