カナリヤ/ホロウ・シカエルボク
建造物のようなものはまるでなく
自然的なものもまるで見当たらなかった
人も
動物も
おらず
一面にぶちまけられた脳漿と
俺だけがそこにあった
俺は歩いた
足元でどんな音がしてるかなんて
絶対に気にしないようにした
だけど
もうどこか
麻痺してるみたいな有様だった
怯えは過ぎたのだ
肉体の疲れと
精神の疲れが
俺の意識を
どこか他のところへ追いやっていた
だから俺は
歩いているしかなかった
どうにかしてどこかへ行かなければ
この麻痺はきっと終わることはないだろうから
あたりの温度は少し
涼しいと言っていいくらいで
もしかしたらそれは
内臓
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