水際のひと/恋月 ぴの
手さえ握られたことないのに
あれは高校二年生の今頃だったか
「あの子ってやりまんらしいよ」
そんなあらぬ噂を言いふらされたことがある
誰かしら噂になっているなと感づいていたけど
まさか私のことだとは思わなかった
火の無いところに煙は立たぬとは言うものの
今どきの女子高生みたいにスカートの丈いじったり
髪の毛染めたりしてた訳じゃない
今までのような曖昧さは許されない
そんな強迫観念じみた空気に支配されてた時期だったしね
私のこと多少なりとも快く思っていないひとがいて
何かの拍子にそんな虚言を口にして
言葉自体に罪はないにしても
勝手に一人歩きしてい
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