プライヴェート・エンド/佐々宝砂
 
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きみだけが判ってくれていた気がするけれど
それは錯覚だったかもしれない
きみはこんなところまで来なくていい
きみは温かい部屋で笑っているのが似合う

柵を飛び越えて
冬の森を駆け抜ける
生き物の影はない
凍りつく下草に身を投げ出せば
この身体はじんわりと背中から腐ってゆく

でもこの身体はママの思いのまま
スパンコールを散りばめた黒いドレスが
どこにいても覆い被さってくる
ママの猟犬は鼻が利く
そうでなくても血塗れのこの身体はひどく臭う

だから あきらめた
逃げ道がないと悟るまでに
こん
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