あとで何も思い出せないくらいの人生を生きたい/ホロウ・シカエルボク
あとで何も思い出せないくらいの人生を生きたい
あの時あそこで何をどんだけ食べたとか
そのあと誰かと湖の閉鎖中のボート乗り場で
かなりきわどいところまで乳繰り合ったとか
そんなことどうでも構わないくらい
回転数の速い人生を
柱時計から飛び出すのを待ちかまえている
造り物の鳩を撃ち殺すような毎日じゃ
せっかく入れ替わり続けている細胞に申し訳が立たない
狩りを忘れた哺乳類だから
その代わりに出来ることを精一杯しなくては
クリームシチューに牛乳をどれぐらい入れるだとか
それをエレガントと呼ぶことの危険性だとか
そんな小理屈はもうどうでもいいのだ
あとで何も思い出せな
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