ナイト・クルージング(乗員も客も数える必要はない)/ホロウ・シカエルボク
 
紐を引いてぶるんとエンジンがかかったら
コースを二週する間はたまらないくらい自由だった
空気は流れるものだと初めて知ったのは
たぶんあの瞬間だった
だけど
いまだって
公道を流してる鉄のイノシシと比べても
こいつの方がずっとカッコいい
きっと
それは
なにもかもむきだしでかまわないせいさ


大きな橋を歩いて渡る
真ん中で
暗い流れをたたえた川面を流れる
例えるならそれは
フォー・ビートの沈み込むプレイに似ている
欄干にもたれて
ため息をつくと
自殺志願者みたいに見えるだろう
たとえこちらにそんな意志など微塵もないとし
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