ナイト・クルージング(乗員も客も数える必要はない)/ホロウ・シカエルボク
死産、の様な意味合いを濃くした
陰鬱な夕焼けが最後の太陽の口を塞ぐ
低く唸る鎮魂歌が
少し離れた高架から微かに聞こえて
出来の悪いドブ鼠が時代錯誤な罠にかかって
そのままよどんだ小さなドブ川に沈められる
大きな生物の隙を窺うだけで過ぎた目玉が最後に眺めたものは
かすれた声でとぼとぼと歩くみたいに
長々と続く泣声のような雲の切れ間
(そしてところどころ、ドブ川に被せられたセメントの天蓋)
夜にまぎれて混濁した脳味噌で
自分の歴史をいちから塗りなおす老人
人格を失くして初めて
誰にも語ることのなかった物語が語られる
(だけ
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