指先の向こうには/AB(なかほど)
 

の下
佇む僕は
振り返るとしょっぱいばかりなのに
帰りたい日々と
帰りたい街の
たんぽぽの種が飛んで行く
空へ
君の指さす方へ
君の指さす方へ
その
指先の向こうへ



  十一

小さな台所のその窓から
ようやく陽射しが入り込んできたので
裏庭に目をやると
かたつむりの姿はもうなく
ハナムグリが葉の表にまわり出してきた
きらきら光る堅羽を持ち上げ
何かに喜びながら
飛ぶ


まだ明星が残る半島で
漁から帰る船を振り返りつつ
山道をじゃりじゃりと進み
少し細いクヌギの木の下で
帽子を逆さに持ち 
思いきり幹を蹴飛ばすと
甲虫がボ
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